【実務日記】法人破産終結後に行う、行政書士の「事後処理」実務
こんにちは、愛知県豊田市の行政書士 渡邊晴美です。
行政書士の仕事といえば、「建設業の許可」や「遺言・相続」「在留資格申請」などをイメージされる方が多いかもしれません。
当事務所でもビザサポートなどを専門としておりますが、お客様のご要望に応じた、その他の許認可・届出も対応しています。
中には「法人の破産手続きが終結した後の、法人格消滅の手続き」という、少し珍しく、かつ非常に重要なご依頼をいただくことがあります。
「破産したんだから、もう会社は消えているのでは?」
そう思われる方も多いでしょう。
ここでは、通常の会社解散手続きとの違いを整理しながら、私たち行政書士がこの「最終局面」でどのようなお手伝いをするのかをご紹介します。
1. 通常の解散と「破産」は何が違うのか?
会社を閉じる手続きには、大きく分けて「通常清算」と「破産」の2つのルートがあります。
大きな違いは以下のとおりです。
閉鎖のきっかけ
- 通常清算:株主総会での決議による(自主的)。
- 破産:裁判所による破産手続開始決定による(法的強制)。
手続きの主導者
- 通常清算:清算人(主に元の代表者などが選任される)。
- 破産:破産管財人(裁判所から選任された弁護士)。
登記の進め方
- 通常清算:自分たちで司法書士に依頼して申請する。
- 破産:裁判所が法務局に対して「嘱託(しょくたく)」することで自動的に進む。
完了の名称
- 通常清算:清算結了。
- 破産:破産手続終結。
通常の解散であれば、自分たちでスケジュールを組み、官報に載せ、財産を分けて……と進めますが、「破産」の場合は裁判所と破産管財人が主導し閉鎖登記まで行われます。
では、破産が「終結」し、登記簿も閉鎖された後、なぜ行政書士の出番があるのでしょうか?
2. 「登記」は閉鎖されても「行政上の記録」は残っている
裁判所の手続き(破産終結)が終わると、法務局にある会社の登記簿は閉鎖されます。
これで法的には「消滅」したことになりますが、実は各行政機関への「報告」は別途対応が必要となります。
ここが行政書士の出番となります。
3. この場面で行政書士がおこなう「3つの重要任務」
当事務所が受任した今回のようなケースでは、以下の3つの行政手続きをセットで対応しました。
① 税務署・自治体への「法人消滅」の届け出
登記が閉鎖されても、税務署や市役所(豊田市なら豊田市役所や西三河県税事務所など)には、「この法人は破産終結により消滅しました」という報告書や届出書を出す必要があります。
これを出さないと、行政上の管理データは残ってしまいます。
届出の際に必要な法人閉鎖登記簿謄本
税務署では届出の際に特に添付資料は必要ありませんが、市役所や県税事務所では「破産終結」が登記された閉鎖登記簿謄本が手続きに必要となります。
法務局で入手しておきましょう。
税関係の届出を行政書士が行ってもいいの?
行政書士が関与して良い業務は、破産手続終結後の法人について、登記事項等の客観的事実に基づき、税務官公署へ提出する「法人異動届出書」「事業廃止届」「解散・清算結了届」等の届出書類の作成および提出代行に限定されています。
税額の算定、課税標準の計算、申告書の作成、申告要否の判断、またこれらに関する相談対応は一切行っておりません。
繰り返しとなりますが、以下の内容が含まれる場合は、行政書士では対応できませんので、税理士に依頼する必要があります。
- 税務代理
- 税務書類の作成(確定申告書、消費税の届出書など)
- 税務相談
県税事務所には、2回届出が必要
税務署や市役所は破産終結後に届出を出せばよいのですが、県税事務所はそうではありません。
「破産開始」の登記がなされた後に「解散」報告書を出し、「破産終結」登記後に「清算結了」報告書を提出する必要があります。
② 社会保険・労働保険の「最終確認」
従業員の方がいた場合、通常は管財人が資格喪失手続きを行いますが、稀に手続きが漏れていたり、事業所としての「全喪届(廃止届)」が未完了であることがあります。
年金事務所やハローワークに確認し、もし未完了であれば速やかに書類を作成・提出するよう代表者様へお伝えします。
年金事務所での手続きの際は、市役所等と同様に閉鎖登記簿謄本が必要となります。
※代表者様ご自身での対応が難しい場合は、社労士へ依頼
社会保険関係の届出を行政書士が行ってもいいの?
通常は破産管財人が行う業務のため、行政書士が行うのは「対応が済んでいるか」の確認となります。
ここで対応が済んでいなかった場合は、行政書士では年金事務所やハローワークへ提出する書類を、報酬を得て行うことは出来ません。
上記のとおり、ご自身で対応いただくか、社労士へ書類作成と提出を依頼することになります。
③ 許認可の「廃業届」
建設業や宅建業、酒類販売など、行政の許可を得ていた場合、その免許を返納し「廃業」を届け出る必要があります。
4. まとめ:お客様の心の負担を軽くすることが、行政書士の仕事
「破産手続き」という大きな山を越えた後、残務処理に追われるのは代表者様にとって精神的にも大きな負担です。
税務署・市役所・県税事務所への法人格消滅届
社会保険の適用廃止完了のチェック
各行政庁への許認可返納
これらを一括で引き受けることで、代表者様の心の負担を減らし、安心するためのお手伝いしたいと思っています。
もし、「裁判所の手続きは終わったけれど、役所関係の書類はどうすればいいの?」と不安な方がいらっしゃいましたら、ぜひ一度ご相談くださいね。
あとがき
今回のような「破産終結後」の業務は、決して頻繁にあるものではありません。
そのため、専門とする業者が少なく、お客様も
「自分一人で対応するのは辛いけれど、一体誰に頼んだらいいのか分からない……」
とお一人で抱え込んでしまいがちです。
こうしたお悩みは、法人破産に限らず、型にはめることのできない複雑な許認可届出などでも同様に生じるものです。
当事務所では、お客様との信頼関係を第一に考えております。
どのような難しい局面でも「前例がないから」「専門外だから」とお断りするのではなく、お客様お一人おひとりのご事情に真摯に向き合い、解決まで丁寧にサポートさせていただきます。

