育成就労制度の転籍ルールを徹底解説|企業が知るべき条件・義務・人材流出を防ぐ対策
※2026年2月20日追記
出入国在留管理庁および厚生労働省より「育成就労制度運用要領」が公表されました。
転籍に関する具体的な要件や判断基準も示され、分野別運用方針との関係がより明確になっています。
本記事では、公開された運用要領の内容を踏まえ、企業が押さえるべき転籍ルールの実務ポイントを整理します。
この記事は、外国人雇用・在留手続を専門とする行政書士が監修しています。
しのび行政書士事務所では、外国人雇用に関する在留資格手続、制度対応、企業様の体制整備支援など、実務に基づいたサポートを行っています。
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育成就労制度では、これまでの技能実習制度と異なり、外国人本人の意向による転籍(転職)が制度上認められる仕組みが設けられています。
そんな中で企業様が特に不安に感じられるのは、以下の点です:
- 育てた人材が他社に移ってしまうのでは?
- 転籍を止めることはできないのか?
- 企業側はどこまで対応義務があるのか?
しかし、育成就労制度の転籍は 「自由な転職制度」ではありません。制度趣旨と要件を正しく理解すれば、企業が不利になる仕組みではなく、管理体制の整った企業ほど評価される制度設計であることが分かります。
本記事では、育成就労制度における転籍の基本的な考え方、外国人本人・企業双方の要件、企業が取るべき実務対応を解説します。
※育成就労制度全体の仕組みや技能実習制度との違いについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
この記事の信頼性について(公式情報の確認)
育成就労制度については、運用要領が公表され、制度の具体的な運用基準が示されています。今後も政省令・告示・分野別運用方針の詳細化により内容が補足・変更される可能性がありますので、最新情報は出入国在留管理庁の公表資料をご確認ください。
▶ 公式情報:育成就労制度|出入国在留管理庁
※本記事は、育成就労制度運用要領および公表資料に基づき整理しています。
この記事で分かること
- 育成就労制度 転籍ルール
- 育成就労 転職 条件
- 企業側の義務
- 転籍を止められるのか
- 人材流出対策
- 監査で見られるポイント
① なぜ育成就労制度では転籍が認められるのか
技能実習制度では、原則として転職(転籍)は認められていませんでした。
しかし、次のような問題が指摘されてきました。
- 不適切な労働環境から離れられない
- 労働問題の潜在化
- 実習生の失踪
育成就労制度では、こうした課題を踏まえ、「人材育成」+「労働者保護」を制度目的として明示しています。
転籍制度は、単なる“自由化”ではありません。
不適正な環境から適正な環境へ移れる仕組みを制度に組み込むことで、
適正に受け入れている企業が正当に評価される制度へ転換するための設計です。
つまり、「企業に不利になる制度」ではなく、
ルールを守っている企業ほど信頼を得やすくなる制度へと変わっていくのです。
育成就労制度への移行スケジュールや、技能実習制度の廃止の全体像については、
技能実習制度は2027年に廃止?育成就労制度への移行と企業が準備すべきこと
の記事で詳しく解説しています。
制度全体の流れを確認したい方は、あわせてご覧ください。
② 転籍は「自由な転職」ではない
外国人本人に求められる主な要件(運用要領公表内容に基づく)
- 一定期間の就労実績
同一の受入れ機関において、分野別運用方針で定める期間の就労実績が必要。
多くの分野では「1年以上」、介護・建設・外食業など一部の分野では「2年以上」とされています。 - 育成就労期間の適正管理
技能実習からの移行者を含め、制度上の在留期間の上限を超えていないこと。 - 技能水準
育成就労評価試験(初級)への合格(※従来の技能検定基礎級や技能評価試験(初級)を再編した試験です) - 日本語能力水準
A2.1相当以上の日本語能力が求められる。
日本語能力試験(JLPT)N4相当以上など、分野別に定める試験への合格が必要とされる。 - 転籍範囲の限定
原則として同一の業務区分内での転籍に限られる。 - 分野別運用方針による追加要件
分野ごとに個別の条件が設定される場合がある。
企業側の要件
- 適正な育成体制
- 労務管理の適正
- 受入人数割合基準
- 不適正企業に該当しないこと
「どこへでも移れる」のではなく、適正な企業間での移動が想定されている点が重要です。
「育て損」を防ぐ仕組み
育成就労制度では、転籍が認められる一方で、受入れ企業の教育投資が過度に不利益とならないよう配慮がされています。
運用要領では、転籍が成立する場合、一定の初期費用について転籍先企業が分担する仕組みが設けられることが示されています。対象費用や具体的な算定方法については分野別運用方針等で定められます。
これにより、企業が実施した日本語教育や技能訓練等の投資が、全く回収できない状態とならないよう制度設計がなされています。
転籍は公的ルートが原則
育成就労制度では、本人意向による転籍は、ハローワークや監理支援機関等を通じた公的ルートによるマッチングを前提とする仕組みとされています。
受入れ企業による直接的な引き抜きや私的な勧誘による転籍は想定されておらず、制度上の適正な手続きを経る必要があります。
③ 企業は転籍を拒否できるのか
企業様が最も気になる点ですが、育成就労制度では、一定の要件を満たす場合、本人の転籍意思は尊重されることが前提とされています。
制度上、企業が一方的に転籍を拒否することはできず、適正な手続の下で判断されます。
問題となる対応例
- 不当な引き止め
- 違約金・損害賠償予定額の設定による事実上の拘束
- パスポート・在留カードの不適切な管理
- 転籍希望の相談を受け付けない対応
運用要領では、転籍に関する企業側の対応状況も適正性の判断対象となることが示されており、説明内容や協議経過の記録を残すことが重要になります。
④ 企業が不利になるのは「転籍」ではなく「管理不備」
転籍そのものよりも問題となるのは、管理体制の不備です。以下の状態はリスクが高まります:
- 労働条件の説明記録がない
- 教育計画が形式的
- 日本語支援の実態がない
- 面談記録がない
- 相談体制が整備されていない
これらは転籍の場面に限らず、企業の適正性評価そのものに影響する要素です。
👉 関連:監査で不適正とされる企業の特徴
⑤ 人材流出を防ぐ実務対策
制度上、要件を満たした転籍を無理に止めることは難しいですが、「残りたい企業」になることで対策が可能です。具体策:
- 育成計画の明確化
- 定期面談の実施と記録
- 日本語学習支援
- キャリアパスの提示
- 相談窓口の整備
制度への適正対応は、そのまま外国人材の定着施策につながります。
👉 関連:管理体制整備の具体策
⑥ 監査・適正性判断で確認される主なポイント
- 転籍相談時の対応記録
- 本人意思確認の記録
- 不当な制限措置の有無
- 労働条件説明の履歴
- 教育・支援実施の記録
育成就労制度では、転籍対応を含む企業の受入れ体制全体が適正性判断の対象となります。
記録の有無や内容は、監査や更新審査時に確認される重要事項となります。
👉 関連:監理支援機関・監査の仕組み
⑦ まとめ
- 育成就労制度は、適正管理を前提とした制度設計である
- 適正な受入れ体制を整備する企業が評価される仕組みとなっている
- 記録整備が最大の防御策となる
- 定着施策は制度対応そのものである
育成就労制度の全体像や、企業が制度開始前に整備すべき体制については、以下の記事で体系的に解説しています。
よくある質問(FAQ)
Q. 転籍は自由になりますか?
A. 無制限に認められるものではありません。就労期間・技能水準・日本語能力など、制度で定められた要件を満たす場合に限り認められます。
Q. 企業は拒否できますか?
A. 要件を満たす転籍について、企業が一方的に拒否することはできません。不当な引き止めや制限措置は、適正性判断上のリスクとなります。
Q. 人材流出を防ぐ方法は?
A. 育成計画の明確化、定期面談の記録、日本語支援の実施、将来のキャリアパス提示など、日常的な定着支援が最も有効です。
本記事の内容をより詳しく知りたい場合や、育成就労制度の実務対応について幅広く確認したい場合は、
育成就労制度Q&A記事をご覧ください。
監修・執筆
しのび行政書士事務所 行政書士 渡邊晴美
外国人雇用制度・育成就労制度のコンプライアンス分野を専門とする。トヨタグループ企業人事部門・法律事務所勤務経験を有し、企業実務と法制度双方の視点から制度解説を行っている。
育成就労制度の体制整備でお悩みの企業様へ
育成就労制度では、運用要領が公表され、転籍対応・記録整備・支援体制など、企業に求められる管理水準がより明確になりました。
制度上のルールを理解するだけでなく、実際の管理状況がその内容に沿っているかを確認することが重要です。
育成就労制度は、従来の技能実習制度とは管理・監督の視点が大きく異なります。
制度開始(2027年4月1日予定)を見据え
👉 「現在の管理体制が育成就労制度に対応できるか」
👉 「適正性判断で問題となり得る部分はないか」
👉 「強みとして評価される体制になっているか」
を事前に確認しておくことが、将来の監査や更新審査で慌てないための最も有効な準備となります。
当事務所では、こうした“不安を先に安心に変える”ための初回体制チェック(無料)を実施しています。
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現状確認チェックで分かること
- 現在の管理体制で制度移行にそのまま対応できる部分
- 適正性判断で確認対象となるリスク箇所
- 無理なく整備を進めるための優先順位と改善の方向性
※ 現状確認相談は状況把握を目的としたもので、無理なご提案や契約の前提はありませんのでご安心ください。

